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中国VOC規制が2020年12月から施行されます

2020.11.10

※本記事は『一般社団法人 東京環境経営研究所』の記事を引用しております。
 シックハウス症候群で日々、大変な思いをされておられる方にとって、とても有意義な情報かと思います。
 是非、有効活用をして頂ければ思います。



1.VOC規制国家標準

中国国家標準化委員会は、2020年3月4日に、製品に含有されるVOCなどの有害物質の制限量に関する7件の国家強制標準(GB規格)を発行しました。 いずれも2020年12月1日から適用が開始されます。

(1)GB 24409-2020:车辆涂料中有害物质限量(車両塗料用の有害物質の制限量)(注1)

VOC基準は塗料を下塗、面塗、トップコートなどの用途、水性、油性などに区分して基準が示されています。 重金属(鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)の制限値もあります。

(2)GB 18581-2020:木器涂料中有害物质限量(木製品用塗料の有害物質の制限量)(注2)

VOC基準は水性塗料、油性塗料、UV硬化塗料などの使用方法別に定めています。

(3)GB 18582-2020:建筑用墙面涂料中有害物质限量(建築用壁面塗料の有害物質の制限量)(注3)

VOCだけでなく可溶性重金属物質の基準もあります。工業用ニトロ類ではフタル酸エステル類の基準もあります。

(4)GB 30981-2020:工业防护涂料中有害物质限量(工業用保護塗料の有害物質の制限量)(注4)

VOC基準は塗料を下塗、面塗、トップコートなどの用途、水性、油性などに区分して基準が示されています。 電気電子機器では重金属(鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)の制限値もあります。

(5)GB 33372-2020:胶粘剂挥发性有机化合物限量(接着剤の揮発性有機化合物(VOC)の制限量)(注5)

VOC基準だけで有害物質規制はありません。

(6)GB 38507-2020:油墨中可挥发性有机化合物(VOC)含量的限值(インク中の揮発性有機化合物(VOC)含有量の制限)

溶剤型、水性型、オフセット型や硬化型インク別にVOC基準を定めています。

(7)GB 38508-2020:清洗剂挥发性有机化合物含量限值(洗浄剤中の揮発性有機化合物の含有量の制限)(注6)

特定の揮発性有害物質としてホルムアルデヒドなどがあり、基準が厳しくなっています。

工業用洗浄剤から除外される揮発性化合物のリストもあります。

規格名称は様々ですが、各規格にはVOCの基準があり、特定用途では有害物質規制があります。 GB規格は閲覧できる仕組みになっていますが、PC側の設定があるようで、筆者の環境では見られないものがあります。(注7)

WTO通報版が確認できたものはリンク先をお示しします。

2.背景

中国の冬の空はスモッグで覆われている、PM2.5が日本にまで流れてくるなどが話題になっています。

(1)このような状況から、2018年6月27日に国務院は「青空防衛戦争に勝利するための3年間行動計画」(打赢蓝天保卫战三年行动计划)を通知しました。(注8)

この通知の目標は、「3年間の懸命な努力の結果で、主要な大気汚染物質の総排出量を大幅に削減し、温室効果ガス排出量を削減する。 さらに、微細粒子状物質(PM2.5)の濃度を大幅に削減し、重度の汚染の日数を大幅に削減し、周囲の大気質を大幅に改善することで、明確に人々の青空の幸せを高める」としています。

数値目標も明示されています。

 

・2020年までに、二酸化硫黄と窒素酸化物の総排出量は2015年と比較して15%以上削減する。

・県レベル以上の都市のPM2.5の濃度は2015年と比較して18%以上削減され、県レベル以上の都市の大気質が良好な日数の比率 80%に達し、著しく汚染された日の比率を2015年と比較して25%以上減少させる。

基本目標は、「第13次5ヵ年計画」です。

「行動計画」の第8項目(法制度の改善と環境経済政策の改善)で、「法律、規制、基準の仕組みを改善する。環境保護税の徴収の範囲にVOCを含めることを検討する。 北京-天津-河北地域および周辺地域における汚染物質排出許可の管理に関する規制と大気汚染の防止と管理に関する規制を策定する。 2019年末までに、コーティング、インク、接着剤、洗浄剤、およびその他の製品のVOC含有量制限に関する必須の国内基準の策定を完了し、2020年7月1日から主要な領域で主導的にそれらを実施する。」としています。

(2)2019年6月26日に生態環境部が「主要産業における揮発性有機物の包括的な管理プログラムの発行に関する通知」を告示しました。(注9)

 

この通知は、「「第13次5ヵ年計画」の揮発性有機物(VOC)汚染防止・管理に関する作業計画を綿密に実施し、VOCの科学的、目標的、効果的な管理を強化し、温室効果ガスの排出を共同で管理し、この計画を策定する。」としています。

現状認識として、「VOC排出は、大気環境への影響が顕著である。 VOCは、微粒子(PM2.5)とオゾン(O3)(光化学オキシダント)を形成する重要な前生体であり、気候変動にも影響を与える。」としています。

対応は「源流での代替を強力に推進する」ことです。

「水性、粉末、高固形分、無溶剤、UV硬化等の低VOC含有塗料」や「低VOC含有量、低反応活性洗浄剤等、溶剤系塗料、インク、接着剤、洗浄剤等」に置き換えて、「VOCの発生源からVOCを低減させる。」としています。

工業用コーティング、包装印刷、その他の産業は、原材料の代替を強化する必要があり、化学産業は、芳香族炭化水素、ハロゲン含有有機化合物のグリーン置換を加速するために、低(ゼロ)VOC含有量と低反応性原料の使用を促進する必要があるとしています。

企業は、低VOC含有量の木材コーティング、車両コーティング、機械および機器コーティング、コンテナコーティング、建物および構造保護コーティングの使用を精力的に推進し、技術成熟産業では、低VOC含有量インクおよび接着剤の使用を促進し、2020年末までに主要領域をほぼ完成させることが求められます。

国は、 低VOC含有量の塗料、インク、接着剤などの研究開発・生産の迅速化を奨励します。

「通知」には具体的事項が含まれており、「 細かい管理を徹底的に実施する」としています。

各地域は、O3、PM2.5の発生解析、産業汚染排出特性、VOC物質の光化学反応活性などを組み合わせて、地域のVOC制御の主要産業と主要汚染物質を特定し、悪臭汚染物質や有害物質管理を考慮し、VOC管理の正確性、目標、有効性を向上させる効果的な制御スキームを提案します。

また、「一工場一策」制度を推進するとし、各地方は企業への支援指導を強化すべきでとして以下を示しています。

 

・ 地域の汚染物質排出量の多い企業には、 専門家を組織して専門的な技術サポートを提供し、厳格にチェックする。

・企業が実行可能な汚染対策方案を作成するよう指導し、原副材料の代替、プロセスの改善、無組織排出管理、排気ガス収集、汚染対策施設の建設などの全過程の排出削減要求を明確にする。

・投資コストと排出削減効果を測定し、企業がVOC総合対策を効果的に展開するために技術サービスを提供する。

・重点地域は現地のVOC排出量が比較的に大きい企業を組織して「一工場一策」方案の編成作業を展開し、2020年6月末までに基本的に完成する。

・管理による効果の評価活動を適時に展開し、各地で打ち出した補助金政策は排出削減効果と緊密に連動させる。

・地方が重点業界に対して強制的なクリーン生産審査を推進することを奨励する。

企業の懸念事項が、当局の監視ですが、V章4項で以下を示しています。

監督と執行を強化する。 VOC排出規制の執行を強化し、違法排出を厳しく取り締まり、効果的な抑止効果を形成するべきである。 無免許の下水、無免許の排出、排出基準の安定化、対策管理要件を満たさない企業は、日次連続ペナルティ、押収、生産制限などの手段を総合的に適用し、法律に従って厳重に処罰し、定期的に社会に開示する。

注記

VOCとPM2.5やO3への関係は、明確な論理が確立していない部分もありますが、

社団法人日本塗料工業会が関連を説明していますので、参考になります。(注10)

3.ガイドによる基準

2020年6月30日に中国生態環境部は、「揮発性有機化合物(VOC)実用管理手引(挥发性有机物治理实用手册)」など3冊の電子書籍をホームページ上に掲載しました。(注11)

 

「手引」では、VOC物質に関する概念、定義、管理、生産プロセスの注意点、現場検査のポイントなどの情報が詳しく紹介されています。

揮発性有機化合物の排出または関連する製品に関わる企業の参考資料になります。(注12)

4.まとめ

日本企業の製品を中国に輸出する場合で、製品が塗料などであれば、2020年12月1日から1項のGB規格が適用されます。

塗装した製品(成形品)には1項のGB規格は適用されません。 源流を管理すれば下流は汚染されないという「源流管理」によります。

一方、EUでも工場排出汚染物質規制を「産業排出物(統合汚染防止と管理)指令(2010/75 / EU)(industrial emissions (integrated pollution prevention and control))」で規制しています。(注13)

この指令は、産業活動から生じる汚染の総合的な防止と管理に関する規則を定めています。

また、全体として高水準の環境保護を達成するために、大気、水、土地への排出を減らし、または廃棄物の発生を防ぐことを目的に規則を定めています。

「産業排出物指令は、温暖化効果ガスやVOCや廃棄物などを含めた広範囲な排出ですが、企業の基本的義務を第11条で以下のように規定しています。

 

(a)汚染に対して適切な予防措置をすべて講じる。

(b)利用可能な最良の技術を適用する。

(c)重大な汚染は起こさない。

(d)廃棄物の発生は指令2008/98/ECに従って防止する。(以下略)

 

「利用可能な最良の技術」は、BAT(Best Available Technology/ Techniques)と言われるものですが、その用件を付属書III(利用可能な最良の技術を決定するための基準)で以下のように示しています。

 

(i) 低廃棄物技術の使用

(ii) 危険性の少ない物質の使用

(iii) 必要に応じて、プロセスで生成および使用された物質と廃棄物の回収とリサイクルの促進

(iv) 工業規模で成功を収めて試行されてきた同等のプロセス、設備、または操作方法

(v) 技術の進歩と科学的知識と理解の変化

(vi) 関係する排出の性質、影響、量

(vii) 新規または既存の設備の試運転日

(viii) 利用可能な最良の技術を導入するために必要な期間

(ix) プロセスで使用される原料(水を含む)の消費と性質、およびエネルギー効率

(x) 環境へ排出の全体的な影響と環境へのリスクを防止または最小限に抑える必要性

(xi) 事故を防止し、環境への影響を最小限に抑える必要性

(xii) 公的な国際機関によって公開された情報

 

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